総目次
①きっかけ(ここ)
Introduction ②
I. The MMT Money Story ③
II. The MMT Micro Foundation- The Currency as a Public Monopoly ④と⑤と⑥
(解説編: ”indifference” って何だろう が挟まる)
III. The Source of the Price Level ⑦
IV. Agents of the State ⑧と⑨
V. The Determination of the Price Level ⑩
VI. Inflation Dynamics ⑪
VII. Interest Rates and Wages ⑫
VIII. The Hierarchy of Demand ⑬
IX. Conclusion ⑬
きっかけは…
なかなか始まらない「資本論をちゃんと読む」ですが、その準備としてMMT創始者のモズラーがインフレーションについて語っているこの小文を「言葉に即してちゃんと読む会」をやってみたい。
— nyun (@erickqchan) February 9, 2022
一緒に考えたい人はいる? https://t.co/Wm1ch1diqj
わーい(*^▽^*)
今日の勤務が終わったら、明日あさっては休みなので、読んでみます!
DeepLに通してサラッと読みました。
確かにこれはマルクスの前に確認すべき議論ですね。
どう感じたか、そのへんをもうちょっとくわしく?
貨幣価値と実物価値を結びつける議論だと感じたので
翌日
ここに機械翻訳(DeepL)を併記したものを置きました。
https://docs.google.com/document/d/1RXiqZU0aT6i1xOqwTmNw-Y0h0H4FMuElTjc-A0GqlUw/edit
”私はこれまでの著書で、プラス金利政策を「すでにお金を持っている人のためのベーシックインカム」と呼んできたが、そのように述べたところで、政治的な支持は全く得られない。”
このすでにお金を持っている人の為のベーシックインカムという言い回しは最近もモズラーさんがツイッターでおっしゃってましたね。
これに出てくるthe tax credits税額控除ってなんのことなんですか?
税額分供給される通貨、みたいなニュアンスですかね?
イントロからじっくり読んでいきたいのだけど、まずは the tax credits から考えてみましょうか
イントロにつづく、I. The MMT Money Story という項は全体の話の前提条件なわけですが、シンプルなこれ
1.Imposition of coercive tax liabilities
2.State spending
3.Payment of taxes and purchase of state securities
これが骨格で、それをもう一度(agein)別の言葉で肉付けした説明をしちるわけですね(1~5)。
the tax credits という言葉は、肉付けした方の1と2で提示されています。
機械翻訳はこうなっている。
「税金の負債は、設計上、商品やサービスの売り手を生み出し、それと引き換えに適切な税額控除を求めますが、後者は定義上、失業者なのです。」
さて、シンプルバージョンの1~3は、肉付けバージョンの1~5の対応は後者の番号に´を付けて表記するとこういうことになりますか。
1 が1´~2´
2が3´
3が4´~5´
ということで the tax credits という語は1の「強制的な税負担の賦課( Imposition of coercive tax liabilities )」とはどういうことか、の説明の中でまず現れます。
なるほど
1’「impose(課している)」のは誰に対してかと言えば、people (人々)ですがそれは明らかなので省略されています。
The state imposes tax liabilities (on the people) with penalties for non-payment.
と読むしかない。
続くここですが
The tax credits required for the payment of taxes are units of the state’s currency
(これ、tax だけでも意味は通るところですが)まずは語源から考えて、 credit はラテン語の「信じる」という意味の動詞 credere だから「税の信用」と解釈してみましょう。
「税の信用」了解です!
うーん
The teacher imposed a homework on the students.
先生は生徒たちに宿題を課した。
このとき homeword credits とは何でしょうね?
宿題の信用??
この credits が 要請している(require している)条件とは何でしょうか?
宿題をすること?
学生に宿題をさせること
そして先生は後日証拠を求めますよね、たいていの場合(笑)
図工の宿題だったら絵とか造形物とか、国語や社会だったら文字で書かれたオブジェクトを制作することが要請されますよね。条件になっている、というか。
なんか分かったかも。税金をちゃんと払いましたよっていう証拠ですか??ちゃんと払ったからもう払わなくていい証拠みたいな。
そして当たり前なんですが、先生に証拠を示すことまでが宿題と言う制度の条件になっていますよね。
なるほど
同じように the tax credits が要請する(条件にしている)のは the payment of taxes 、税の「支払い」であり、それがその国の通貨建てであることであると。
だから the tax credits は「(政府によって)税を課されている状態」のように解するといいだろう、というのが一つ。
もう一つは、簿記で貸方(あるいは貸方に書く)が credit 、借方(あるいは借方に書く)が debit なわけですが、この credit の意味ともシームレスにつながるんですよね。
人々はそのバランスシートの貸方(BSの右側つまり負債側)に「税債務」をいきなり書き込まれてしまうわけです。
調べてみました

では2’を見てみましょう
2. The tax liabilities, by design, create sellers of goods and services seeking the appropriate tax credits in exchange,
in exchange にも注目です。
「税を課されている状態」を解消しないと罰を受ける(1’)ので、それを避けるため、商品かサービスを売って、それらと交換にこの状態を解消するためのものを得ようとする。
そうすると、tax credits=税を課されている状態を解消するもの、罰を受けずに済むもの
「MMT(現代金融理論)のエッセンス! ウオーレン・モズラー「命取りに無邪気な嘘 1/7」から同じ話の部分を抜粋してみます。

罰を与えてますね
これがMMTの「基本モデル」になっているわけです。
通貨を作ってもまだモデルは動かない。税を課した上で、その通貨で支出することがモデルの始まりであると。
名刺バージョンもありますよね。これはクーポンバージョンですね。
いわばモズラーは「『通貨制度が動いている』とは1から3、あるいは1’から5’という意味ですね」と言っているわけ。分析哲学であり、資本論のマルクスにとても近いと思いますね。
なるほど~
”しかし経済学的な形態の分析には、顕微鏡も化学の試薬も役立たない。その代わりに抽象の能力を活用しなければならない。ブルジョア社会において経済的な細胞形態となるのは、労働生産物の商品形態あるいは商品の価値形態である。この学問に馴染みのない読者には、こうした分析がつまらない詮索にみえるかもしれない。たしかにこの分析はつまらない詮索ではある。しかし顕微鏡を使った解剖学がつまらない詮索にみえるとすればのことである。”(資本論第一版への序文)
マルクスが資本論でやったことも商品の”分析”から始まりますので、そういう意味でなるほどと思いました。
そうですね!
(*^▽^*)
そのへんでいろいろ書きたいことはあるのですが(「モデル」って何だろうとか)それは置いておいて、せっかくなので credit あるいはラテン語の credere と「借りる」「貸す」について少し分析してみようと思います。
上の宿題の例で、宿題という制度というのは成果物の制作が条件になっていましたが、信用にも同じような条件があると思うんですよね。
成果物がないなら宿題をやったとはみなされないように、何らかのブツが介在しない「信用」というものも考えにくい。
たとえば「AさんはBさんに傘を借りている(=BさんはAさんに傘を貸している)」という事態は、「BさんはAさんを信用している(AさんはBさんに信用されている)」を含んでいるし、それを返却したらその状態(信用している/されている)はとりあえず終わる、みたいな。
確かに、ちゃんと返してくれると信用するから貸すことができますものね。
返さなくてもいいなら贈与になりますし。
銀行の貸出も、利子コミコミの「返済」を期待して貸し手が借り手にクレジットする(預金を借手のの借方に記帳(debit)し、貸方に負債を記帳(credit)する)わけです。
これを credit creation、信用創造と言ってもべつにいいでしょう。でもジャパンの某界隈でよくある表現、「信用創造とは銀行貸出で預金が創造されるという意味である」みたいなよくある言い方はつまらないし、ただの言い換えじゃんって思うんですよね。何の意味があるのかさっぱりわからない。
そういうものの考え方ではMMTやマルクスはまるっきりわからないと思います。
銀行の貸し出しだけじゃなくて、信用創造は日常を観察すれば人に物を貸すときにだって起こっているし、特別なことではないということですか?
そう思いますし(傘を貸す、とか)そういう言葉を使いたいなら別にいいけれど、いったいなんで使っているの?という感じです。
そんなふうに独自の用法を定義したりする前に、その言葉がどのように使われているかの分析が先でないと議論が宙に浮くのではないでしょうか。マルクスが言ったように知識に先立つ知識が欠けている。
ちょっとケルトンの The Deficit Myth からも一つ。
borrowing という言葉が引用符で囲まれて ”borrowing” になっています。

よく「政府の “borrowing(借入)”」 っていうけれど、それってドルと債券の両替のことですよね、みたいな。
これは言葉の定義ではなく、実際に使われている言葉の分析なわけですよ。
bond(国債):利付の債権、USドル:利なしの債権
の交換
この挿絵は分かりやすいですね